19日目 予想外 寝過ごしたのも予想外だし 鬼火に負けたのも本当は予想外だ カクがアルマーニの冷蔵庫 という 鞭 を作製して来たのも予想外だし 「とりあえず作って見たんですが…お気に召しませんか?やはりアルファロメオの方が良かったかな…」 ってのも予想外と言うか、訳がわかんねえ; しかし、何より予想外だったのは キャンディが一個しかあげられないことだ! 俺の愛を誰か一人だけに渡すなんて出来ない! しょうがないから会長にプレゼントすることにした。 四旬節だが…まあ、いいだろう。 「会長、次のボーナスはよろしくおねがいしますよ!」 ふと見るとカクは、白熊のぬいぐるみに紫のボレロを着せてじーっと見つめている。 …何してんだアイツは; 少し真面目に考えよう。 カクは自作のテディ・ベアを持ったまま、考えていた。 まず待遇改善要求を出す。 それで、認められなければ転職を検討… とは言え、引き抜きのアテは無いし、会長に会って大学中退してるしな。 まぁアビトゥーア(*1)は取得しているから、一度本国に戻って再入学しても良いわけ… それは日本にいられないから、本末転倒か。 とは言え、ここにいる限り日本の就職情報なんて得られそうに無いし… … ああ違う。 日本に帰れれば今の待遇のままでも良いんだ。 うーん… とりあえず何か連絡手段があればいいんだ。 通信機器か、移動手段。 ここに来てからの自分達の変化を考えると、そう言った技術開発も可能だろう。 まず、現状の整理。 携帯は圏外。GPSも役に立たない。 非現実的な話になる気がするけれど… ここは地球なのかどうかも怪しいんだよな。 魔法のような説明のつかない現象が起きているわけだし、生物も知識に無い生態のものばかりだ… それに関しては、遺跡の外に出た際に、夜の星の状態を見てみよう。 地球であれば、知っている星座の一つもあるだろう。 … そして この状況を逆手に取ろう。 地球上の技術や物理法則で可能不可能を論じるのではなく ここで起きる現象を基礎に据えて、考えてみる。 最も利用できそうなものは、会長も使う召喚系の技。 あれを利用すれば、日本から呼び寄せたり、日本に移動したり出来るのでは無いだろうか。 実験と解析の為に手段を安定させたいな。 そうなると最初に取り組むべきは、機械などによって召喚を実行させる事か。 会長に頼んで見せてもらうか、自分で習得するか… うーん。正直、自分で習得しても日に何回も使えなそうだしなぁ; 戦闘になった時に行動できないと困るし。 それは会長も一緒か。 ならば… 「何だ、また泣き寝入りか?」 白いベアを抱えて眠るカクの枕元でスケが呟く。 なにやらブツブツと呟いているような、うなされているような様子である。 「…うー…合成…材料解…んー…にくいー…タピオカー…うー」 「…何が;」 ふと思いついて、額に触ると熱い。 「…知恵熱?」 -------------------------------------------------------------------------------------- 注釈 (*1)ドイツの大学入学資格。ギムナジウム(日本の高校までの学校)の卒業試験も兼ねている。合否ではなく評価。 基本的にこの結果を持っていればどこの大学でも入れるが、人気の高い大学は成績で選考されることもある。 -------------------------------------------------------------------------------------- †:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:† 今日のメニュー スケ: 質素な保存食 を料理し、 プヘヨ・ロールケーキ をつくりました。 カク: 質素な保存食 を料理してもらい、 プヘヨ・ロールキャベツ を受け取りました。 「新ブランド設立だな。プヘヨ。」 会長: 質素な保存食 を料理してもらい、 プヘヨ・ロコモコ を受け取りました。 「さて、これからこのプヘヨブランドをどうメジャー化していくか…」 †:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:† |