13日目 親愛なる深雪さん、そちらは今何月何日ですか? こちらに来てから時間の感覚がおかしくて仕方ないのです。 記憶を辿ると、2週間くらいこちらで過ごしているようなのですが 気分的には数ヶ月経っているような気がします。 カレンダーなどはありませんが、出会った人々の会話で バレンタインデーがどうと言う話題がチラチラと耳に入るのです。 記憶が間違っていなければ、2月の行事だったはずです。 深雪さんにはクリスマスプレゼントも渡せていないのに 帰ったら、渡せなかった分全部まとめてプレゼントします。 だから もう少し待っていて下さい。 カクリッヒ・アツミハルト 「わしの若い頃は、チョコはまだまだ高級品じゃった。わしは山ほどくうてきたので、最近は飽きた。 だが、もらえるものはもらっておく。それが、経営のTOPにたつ秘訣じゃ。早めに動くのも秘訣じゃ」 「…食べたいんですね?」 「…うむ。」 「わかりました、善処します。」 ミツクニスと専属料理人が何やら相談しているところへ、物資調達に行っていたカクが帰って来た。 「スケさん!聞いてください!」 「どうした?」 何か事件でもあったのか、情報でも得たのか、それとも頼んだ食材が無かっただけか… 「あ、これ。生なので先に」 おにく20 を受け取りました。 「賞味期限の偽装はしていないと思います。」 「そういう怖い事は言わなくていい;…で?」 「恵方巻というのは、恵方を向いて食べるもののようです!」 …一応、情報だったようだが、残念ながら既知の事実であった。 「まあ、そうだろうな。」 「ちなみに今年の恵方は北北西じゃ。…正確にはちょっとずれておるんじゃがの」 ミツクニスも豆知識を披露する。 「うっかりうっかり!」 「うっかりではないぞ。これは古くからある方位と現在の方位における考え方の違いで…」 「さっぱりさっぱり!」 ちなみに今年の恵方巻のレシピはこちら。 材料 スパゲッティ:3人分 海苔:3枚(貼りあわせ済) エビ・カニ・ツナ:適量 ソースはシンプルにトマトソース(ペースト状)で。 「重要なのはここからです、スケさん。」 「なんだよ。」 カクはちらりと出来上がっている恵方巻に視線を向ける。 「恵方巻は切らずに丸かじりしないといけないらしいですよ。」 「無言でだろ?知って…る」 スケも思わず自分の作品を振り返る。 スパゲッティが海苔より長いので、海苔を貼り合せてから巻いてあるのだ。 ……長い。 暫しの間の後、カクが観念したように口を開いた。 「郷に入りては郷に従え、そのままで行きましょう。」 「そう言うならそうするが。」 面白がってロングサイズ(50cm前後)にしなくてよかったなぁ、と思いながら恵方巻を皿に乗せる。 「パスタの時点で郷に入ってない気がするのう…」 「うっかりうっかり!」 「ところで、恵方巻もいいんですが、節分といえば…豆まきですよね、ご隠居。」 スケは何故か懐からモデルガンを二丁取りだし、片方をミツクニスに渡す。 「ご隠居、豆の用意はできてますか?」 小声で言いながら、遊底を引き初豆を装填する。 「……。………。………(もぐもぐもぐ)」 照準の向こうには北北西を向いて、つまりはこちらに背を向けて無言でまるかぶり中のカク 「鬼はカクですからね。思いっきりぶつけると、「フンガー」っていって手を挙げますよ。」 伸ばしていた指を、引き金に掛ける。 「ぷはー。食べきった!スケさん、やはりスパゲッティは無理が…」 パン!パン!パン!軽い音を立て、豆が三発撃ち出される。 「?!」 カクは咄嗟に身を縮めたが、腹部やかばった腕に、衝撃が入る。 「あったりー♪」 パン!パン!パン!歓声と同時に次の豆が撃ち出される。 カツンカツンカツン☆ 恵方巻を乗せていた大皿を楯にする。 「何するんですかスケさん!」 「実弾なら死んでるぞ!弓さんに常に気を抜くなって言われてるだろ?」 パン!パン!パン! コンコンコン☆ ちゃぶ台を立て、陰に隠れる。こちらに飛び道具は無い。この間合いでは圧倒的不利。 コンコンコン☆コンコンコン☆ 絶え間ない着豆音に顔も出せない。 ならば… カクは全身に力をためる。 「フンガー!」 ちゃぶ台が放物線を描かず、一直線にスケに向かって飛ぶ。 「うおっ?!」 横に跳んで、ギリギリ避ける。 「あぶねえな!怪我したらどうす…?!」 ちゃぶ台の後ろから、カクが跳び出す。狙いは銃を持った右手。 気づいたスケは避けるか撃つか、躊躇する… どたーんばたーん☆ 「仲良しじゃのう」 「うっかりうっかりー」 †:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:† 今日のメニュー スケ: おにく20 を料理し、 スケ特製ミートローフ(左半分) をつくりました。 「うん、久しぶりのタンパク質だな。」 カク: おいしい草 を料理してもらい、 スケ特製ミートローフ(のつけあわせ) を受け取りました。 「スープはたっぷり吸ってるほうれん草のグラッセだからな。」 会長: おにく20 を料理してもらい、 スケ特製ミートローフ(右半分) を受け取りました。 「熱いうちに食べてくださいね。」 †:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:†:.。.:゚:.。.:† |