アレからどれだけ経っただろう…何とはなしに、自分の記憶を辿る。
始まりは
『閃光』だった…

80年に1度だけ発生する奇妙な現象『閃光』。
空から放たれた閃光を受けたものは、物であろうと動物であろうと何らかの力が与えられ、
姿形を変え、物であっても生を与えられる。
そして同時に、この世界に「マナ」というものが散らばり、
その「マナ」を集めることで、ただ一度の「創造」か「破壊」の権利を与えられる。

関係ないと思っていた。
民俗学の学術的興味から調べた事は有ったが、俺自身は閃光を浴びたわけじゃない。
「創造」か「破壊」の権利も欲しいとは思わなかった。
けれど状況は一転した。

天からの「閃光」を浴びたものたち「エキュオス」。

全く別の研究調査中に出会ってしまったのだ。そいつと。
幸い、相手は戦闘的なタイプでも空腹でもなかったらしい。
むしろ、こちらの出現に驚いたらしく、なにやら針のような物を撃ち出し、
こちらの怯んでいる隙に逃げていった。

そう、あの針。あれに恐らく呪いのような効果があったんだ。
男だった俺の体が、女になってしまうという効果が…

研究調査は打ち切った。男に戻る…それが再優先だった。
勿論女でも民俗学の研究は出来るし、結婚もしていないし、そんな相手もいない。
だが
精神的、社会的、身体的苦痛に三日と耐えられなかった…
考えてみれば当然の事だった。
コレまでの30年間、男として生きてきたのだ。どうしても違和感は払拭できない。
仮に出来たとしても恐らく男だった期間と同じだけの長さが必要なのでは無いだろうか…

慣れるまで待っていられない。男に戻りたい。

その為にはいくつかのやるべき事があった。
まず一つ目は、あのエキュオスを探し、元に戻る方法を解明する事。
二つ目は、あのエキュオスが見つからない場合や解明できない場合に備えて、あらゆる呪いを解く方法を探す事。
三つ目は、それも出来なかった場合、女から男になる術や呪いを使えるようにする事。
四つ目…出来る事なら…ただ一度の「破壊」の権利を手に入れ呪いを破壊する事。

マナハンター。不本意ながら、俺はその仲間入りをした。

研究と違い、マナを集めるのに単独行動には向いていなかった。
数人で行動する。それが適している。
俺は同じようにマナを集める仲間と出会い、行動を共にした。

人形と人間の姿を持つ ガオ
教育研修の為にマナを集める死神 ミーティア
なんだか目的の良く分からない レッズ

人と深く関わるのは苦手だったし、関わるつもりもなかった。
マナを集めると言う共通の目的の為に共闘している…
そう思っていたし、皆もそう思っているのだとも思う。


しかし、男だった期間に引きずられている俺は


彼らと一緒に居た期間にも引きずられている…




意識を過去から現在に戻す。

俺たちは選択の時にいた。
ただ一度の「創造」か「破壊」…

俺は三人を見まわした。

レッズ…
結局レッズは俺を女と信じて疑わないままだった。
どんなに説明しても俺が本当は男なんだと理解できていない。
俺が男に戻ったらどうするつもりなんだろうな…

ミーティア…
死神である彼女はそろそろ地獄に帰るはずだ。
若いけれども中間管理職。個性の強い部下と何とかやっていたし、
俺が男なのもちゃんとわかってくれていた。
俺が男に戻ったとしてもそれはそれと受けとめてくれるだろう。

ガオは…

動かない…
出会った時と同じ、物言わぬ人形になってしまった…

ただ一度の「創造」か「破壊」…
世界は俺たちの居る時点から枝葉のように先に広がっている。

男に戻る世界…
女であることの違和感を消した世界…
ガオを完全な人間にした世界…
現象を継続させた世界…
そして…

卑怯だとも思う。
何十回も同じ事をしているかも知れないとも思う。
破壊と認められないかもしれないとも思う。

でも、今の俺には選べない…
だから



「俺は…『閃光』が発生してから先の時間を破壊する事を望みます…」



END

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